星影にひそむ星々の会話~星座の文法~

精神障害者ピアサポーターをしている僕の徒然

秋の風〜亡くなった伯母

仕事から帰ると、伯母が亡くなったとの報せを受けた。

伯母は年老いていた。僕がまだ小さかった頃、いつも可愛がってくれた。東北訛りがなくならない、苦労に苦労を重ねた心優しい人だった。僕にとっての伯母のイメージは、上野駅で、沢庵と柔らかいうどんが今にもでてきそうな、もてなしの裏表がない人柄だ。沢庵を供することに抵抗のない人は少なくなるばかりで、戦前に生まれた人でないとその感覚は俄かにはわからないのかもしれない。僕などにわかる筈もないのだが、当時はまだ貧しかった東北で、行きたい学校にも行けず、弟妹の世話をしながら青空学校で字の綴りを覚える環境では、かりそめに都会へ出ても、暮らし振りはそんなに楽ではないと認識している。

 

都会は二度目の東京五輪でわいている。遅れ馳せながら都知事も初の女性となった。都知事は「男性優位主義と闘う」とのメッセージを鮮明に打ち出した。フェミニズムのその到来が遅すぎた点は否めない。酒乱の夫から苛められることが稀ではなかった伯母は、どんなに待ち侘びていたことか、想像するに難しくはない。新幹線も特急電車もまだなかった昔の東北で、金の卵と呼ばれる以前の若かった伯母の少女時代を思うと、遣り切れない重苦しさが込み上げてくる。夜汽車の汽笛が聞こえそうな、あの物悲しさ。

 

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夢見て都会に出てきた割には夢が虚しくしおれることをも理解して、思い出を汽笛に託しふるさとにさようならを告げたのかもしれない。流行歌は「花の東京」を謳うものの、絶望が一抹の不安が打って変わる。人形のように扱われ、人間の人間足る所以がわからなくなる。今更どこに逃げようというのだろう。弟妹への想いが一俵の米より重い。

 

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ポジティブになんか生きられる筈もなく、キチンと生きられる筈もなく、ただ逃げ惑う魂を、動かぬ身体に仕舞い込んで、背負う子らを少しでも健やかに育てようと一生懸命だった伯母。あの消えなかった東北訛りがもう聞こえない。秋の虫が鳴いている。