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星影にひそむ星々の会話~星座の文法~

精神障害者ピアサポートをしている僕の徒然

煌めきの翳に潜む狂気

エッセイ

当時の日本は未曾有の好景気で何ら失ったものもなく、正に世界経済を牽引していた。人々は《凡庸》と口々に笑い、時に嗤っても何故か嫌味がなかった。東京は満天の夜空を兆単位のネオンで焦がし、かりそめに月が欠けてもあの圧倒的なネオンで夜は哄笑の一人舞台となっていた。PCのシェアをNECが独占し、先端技術に於いても日本は何もかもを掌握していた。いざなぎ景気と呼ばれたあのバブル経済を経験した僕はその頃、天をも突き落とそうかと目論む自尊心を抱いた学生だった。当時の僕たちにとって大学は毎日毎日がファッションショーの舞台で、都内の学生街はボストン界隈の大学街を侮ることに長けていた。あの頃の僕たちの圧倒的な経済力は、形容のしようがないほどで、日本製でない製品など商品としての価値がないように感じた。SONYの自尊心と僕たちの虚栄心には際限がなく、銀座は天下を握り締めていた。作家は全くのスターで、星などなくても僕らの航海には詩集が羅針盤となった。この完璧な安全の確保は《敗戦》をすっかり塗り替え、しかもナショナリズムへの堕落を知らなかった。海外への観光をこぞって僕たちはして、通貨の円は世界中で歓迎されまた妬まれた。僕たちはロストジェネレーションなど知らずにひたすら勝ち誇った。誰もが女優だった。

 

着飾った僕たちの行方に、不安などある筈もなく、しかし最高度の好景気の代償として孤独を支払いはしたものの、華やぐモードを担保として不動産の購買力をしたたかに確かなものにしたのも事実だった。TOYOTAのクルマのアクセルを踏みしめ、大磯ロングビーチバイパスを全速力で駆け抜けた。《この現実》が瓦解して《嘘》になるなどいったい誰が予測出来ただろう?

 

派手な男女だった私たち、煌めきの翳に狂気が潜むなど信じられなかった。祝福の喝采の直ぐ隣に、虚ろな狂気があるなど、考えもしない。

 

不意に気がついたら、僕は精神科医の前にいて、「先生、神経症ですね、僕は?」項垂れた。