星影にひそむ星々の会話~星座の文法~

精神障害者ピアサポートをしている僕の徒然

生活支援が私の専門、そう彼女は言う

かつて大変お世話になった女性がいる。

「生活支援が私の専門だから」と、大学院でドクターを目指す彼女は言った。当時の僕は生活支援とはどんなものなのか、詳細をよく知らなかった。今、僕が分かるのは、生活支援こそ福祉の要だという事実で、当時もっと彼女から様々なことを学んでおけば良かったと思う。この先、彼女と再会するのかどうかは分からない。淡い期待を抱かずに、ひとり僕も生活支援の研究にいそしむしかない。

 

聡明な彼女はスポーツも出来る口らしく、ボクシングの鍛錬に余念がなかった。漠然とぼんやりジェンダー論を語るだけの女性ではなかった。彼女は自由を生きていた。自由のど真ん中を生きていた。口先やら小手先だけの女性では決してなかった。

 

彼女と意見の合わない点がひとつあった。

 

精神障害を彼女は遺伝だと言った。WHOの見解を彼女は否定するかのような勢いで、遺伝だと思うよ、と言った。彼女のその考えに僕は一歩も譲らなかった。馬鹿げているとしか僕には感じられなかった。時代のセンスに逆行する彼女のあまりにも素朴な見解に、僕は稀に苛立ちもした。それでも彼女からのアドバイスに、耳を傾けようと僕は努めていた。

 

いずれ頭角をあらわす筈の彼女にとって、僕は通行人でしかなかったのかもしれない。生活支援をピンポイントで探究する聡明な女性はそうそういるものではない。彼女の仕事へのひたむきさが、僕には眩しく感じる。追憶のなかでもこんなに美しい女性は他にいない。彼女との日々が色褪せずに僕の心に残っている。専門家の彼女は先生ではなく、さりげなく道端に咲いている小さな向日葵のようだった。