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星影にひそむ星々の会話~星座の文法~

精神障害者ピアサポートをしている僕の徒然

月の翳が滴る東京で・・・

「ほら、秘密の鍵が、解けた」

フランソワーズ・サガンは小説の中でそう綴る。

鍵を無くした人には《ごめんなさい》と言っておこうか。

故意に鍵を隠した人や、故意に鍵を棄てた人には、さて、何て言おうか。

 

私たちの《あの痛烈な日々》は祝祭の序章にすぎなくて、やがて病むまでの心身共に透明な《危うい特権的な時間と空間》を弄んだ私たちは果たして孤児だったのか世界の母親だったのか、それとも《肉体をもたない怪物(詩人ポール・エリュアール)》だったのかな、哲学者フッサールの『諸学問の危機』を確かに一蹴して、夜の銀座へ行ったよね。銀座や赤坂や六本木に、行ったよね。そこで私たちはいろんな人間どもや阿呆を見たんだ。夜空に浮かぶ月の翳からは不思議な雫が滴って。さながら《熱い月》、テルミドールのようだった、狂気の前夜祭。天使の収穫祭。

 

心の青あざ (新潮文庫 サ 2-11)

心の青あざ (新潮文庫 サ 2-11)

 

 その数ヶ月前に、ひょっとすると私たちは読んだかもしれない『心の青あざ』を。

ドン・キホーテの手法で快活な物憂げを書いたサガンのこの小説を。それとも、

 

乱れたベッド (新潮文庫 サ 2-17)

乱れたベッド (新潮文庫 サ 2-17)

 

 そうではなくて『乱れたベッド』だったろうか。無垢のうちに私たちが読んだ小説は。いずれにしても、

 

私自身のための優しい回想

私自身のための優しい回想

 

 遅かれ早かれ、私たちは『私自身のための優しい回想』に出会ってしまう。読了後の私たちの《決意》は固く、なんの躊躇いも一向になかった。「人間たちだなんてどうなったっていいではないか」(フランソワーズ・サガン

 

モラル、なんて知らない。

 

住む部屋もなく、照らす机もなかったから、せめてもの思いでホテルの一室を借りて、迸る熱気を抑えつつ読んだ本こそ、

 

魔女〈上〉 (岩波文庫)

魔女〈上〉 (岩波文庫)

 

 

 

魔女〈下〉 (岩波文庫 青 432-2)

魔女〈下〉 (岩波文庫 青 432-2)

 

 ジュール・ミシュレのこの『魔女』だった。たった一冊の本、これだけだったし、これだけで世界を語るにはもう充分だった。

 

あの夜。ホテルの最上階の部屋を予約して、静かに静かに、凱歌を上げた。