星影にひそむ星々の会話~星座の文法~

精神障害者ピアサポートをしている僕の徒然

『精神科ER 緊急救命室』を読んだ感想

 

精神科ER 緊急救命室 (集英社文庫)

精神科ER 緊急救命室 (集英社文庫)

 

 精神障害を経験した者としてこの著作を読んだ。この著者は精神科医、お医者だ。僕は医療に従事したことがない。福祉職として日々かなりの激務をこなしている。時に医療と福祉は相反することをするが、その事情はクライアントを苦しませてしまうのかもしれない。どうしてクライアントが苦しむのか、医療の現場に立つ人たちなら容易く察しがつくだろう。もし「分からない」と無頓着に応える暢気な医療関係者がいるとしたなら、その自己欺瞞をなんとかしなければクライアントに失礼千万ではないだろうか。そしてこの著作からは、お医者に特有な或る種の冒険が垣間見えるし、その冒険が果たして医療の進歩に繋がるにしても、それではそもそもクライアントをどんな位置から眺めてどんな方向へと位置づけていくのか、漠然と読む素朴な人たちに恰も魔法をかける仕種が払拭できない仕組みとして描かれているような気がする。

 

精神障害者が警察官の手により精神科ERへと運ばれる。そこは東京で、都の規範により粛々とERでの作法が特別な技法により見事な勢いで事がなされる。お医者は多忙のご様子だ。クライアントの家族にテキパキと説明し、同意を求める。その同意は、この著者は明らかにしていないが、実は《精神保健福祉法への賛同》なのだった。さて精神保健福祉法とは、精神的な疾患の人の自由を奪うことができるし、閉鎖病棟への入院を可能にする日本の法律でもある。もし身体への拘束が医療にあたるのならば、どうか丹念にご説明していただきたいと願う。憲法にそれを赦す条文がどこにあるのか、示していただきたいと願う。それ以上にクライアントを「治したい」とご多忙なお医者が願うのなら、何をどう治すのか、どうして「治す」のか、その肝心なところをつぶさに説明するべきではないのか。いったい何が異常なのか、説明するのが当たり前ではないだろうか。もしその課題ができずに「治す」と云うなら、そのことこそ《異常》だろうし、横柄さというそれは《暴力》になるだろう。

 

お医者の英雄伝は、分かった。僕はこれから作家モーリス・ブランショの『白日の狂気』を読もう。