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星影にひそむ星々の会話~星座の文法~

精神障害者ピアサポートをしている僕の徒然

支払った痛みと支払われた犠牲、私達が辿り着いた秘密の部屋にある風変わりな時計は何を指す?


遠い過去にコンシューマーに過ぎなかった私達は、今更原点のコンシューマーには戻れないし、不完全な原点に何ら価値を見出せずに悶え苦しんでいる。追憶は甘美どころか苦々しい心象でしかないのに、ハイネの詩集を久し振りに開いてみれば、ひとりよがりの最果てにある片想いのロマンスがまざまざと蘇り、血のインクで書いた恋文の数枚を月の彼方から手繰り寄せ、遂に目を閉じる。月の他には土星くらいしかない私達の陳腐な夜空に、紅いネオンがスーっと翳り、虚しさを彩るかのように動く書物を緋く燈す。ジュール・ミシュレの『魔女』がたった一冊、都会の安っぽいホテルのベッドの枕元に置かれている。そんなささやかな不運の幸せがもし罪深いなら、私達は神を憎悪で招くしかないのかもしれない。どこかで犬の鳴き声が聞こえた、そんな錯覚、幻でしかないその声の持ち主が実は哲学の小径をひた走る仔猫の溜め息だったと、誰が知っていただろう。



流れたのは大量のアルコールだけではなかった。圧倒的な歳月も、季節に至ることのない季節外れの風と共に流れた。風、だが虚空を舞い踊るこの舞踏の芸術家は、気怠さをももたらした。私達はストラヴィンスキーの憐れな音楽に飼い慣らされることがなかった。熱い視線をこの音楽家に送ることもせずに済んだ。夏に冬の風が吹き、冬になれば自棄に熱い視線を夏に送る。俳句は、遠かった。






不思議だ。まだ辛酸しか味わっていない。そのうえ呼吸も困難だ。なんというダンディーが鏡に映り出されているのだろう。私達の表情が、鏡の奥底に沈み込んだ。その表情を掴み取ろうとしたら、拳が血だらけになった。洗っても、洗っても、石鹸の泡が仄かに赤くなるだけで、一向に落とせない、血。





夜が、すっかり止まっている。朝の、気配がない。ここが、TOKYOか?私達が、私達自身に出会えるのは、あとどのくらいの時間を遣り過ごせばいいのだろう?





僕は、告白を慎んだ。


欲望だけが、充分だ。

充分なのは、確かな欲望だけだった。