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星影にひそむ星々の会話~星座の文法~

精神障害者ピアサポートをしている僕の徒然

ネオンの体温

星々の微かな光を焦がすこの街の雑多なネオンが、いま佳境に入り、夜明けを待ちわびる少女たちの貧困を照らし出す。昼間うたた寝していたネオンサインが、夕方に勝ち誇ったサーチライトを蹴り倒しながら、蒼い光や紅い光、それに体温のないそもそもの光を掲げている。輪になって嗤う少女たちの歯と歯の間に詰まるフライドポテトの残骸を、情け容赦なく体温のないネオンが照らし出す。空間のない場所からこの街にやって来た少女たちに、閉塞と孤独を約束したコスメのショップが、古めかしい蛍光灯の少し鈍い光を道端に提供している。名前さえ持たない少女たちの歪んだ笑顔が蛍光灯を眩しがる。

「タダでもいいよ、泊めてくれるんなら。オマケもあるよ、特別な夜だから」

虚ろな目ではないから、変なクスリなどしていない少女なのだろう。《特別な夜》の曖昧な意味を推し量り、それなりに健やかなこの少女の《オマケ》を強調する声音が痛い。一瞥したところタトゥーはない。蛍光灯がこの少女のカラダを銀色に染め上げている。少女の口臭は否めない。脂ぎったフライドポテトを食べてからもう何時間も経つのだから。

「ゴムなしでいい。子宮も卵巣もありゃしないから。便利なんだ、わたし」

吐瀉物がマンホールにゆっくり流れ、そこから湯気があがっている。

「吐いちゃった。慣れてないの」

笑顔が不思議に思えるのは、この少女が訝しげな視線を四方に走らせるからで、何かをそれなりに警戒しているらしいことが分かる。それに涙袋を強調する化粧をしているからだ。あどけない顔をしたこの少女は口臭を気にすることもしない。

「悪くはない、って、イイ表現だと思わない? きっと、神レベルの言葉」

言葉への嗜好があることをそう披瀝する少女。そう言いながら自己防衛することに馴れている少女。もし神がこの少女を抱きしめないとしたならば、私はその神を心の底から憎むだろう。

「喋らないの? 好きなら好きと言いなさいよ。嫌い? バカだからさぁ、わたし、なーんかさ」

ネオンの体温が少女のカラダに沁み込んで、夜更けが丑三つ時を告げたがる。柔らかいこの少女のカラダに真冬の冷気が忍び寄る。朝が来ないことを祈らないでもないこの少女に、そっと。
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